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ライナーノーツ 1997.6.1

イントロ・レコード第二作「Songs JSI-2」をお届けします。ソングズ?….
そう,本盤には心温まる、ハーモニカの“歌心”が、ゴキゲンなピアノ・トリオにのって,8曲収録されている。ハーモニカの松本は、イントロ・ジャムセッション集大成の第一作「Soulful Intro Live JSI-1」にも参加。また時々イントロに来て、歌心溢れるソロで、ジャムを盛り上げてくれるジャズ界期待の星。ところで、彼には妙な癖がある。それはジャムで、最初の演奏を始める前、必ずトイレに篭るのだ。緊張の余り尿意を催した….にしては、ちと長い。それに、そんなこと位で、緊張する男ではない。心臓と膀胱はデカそうだ。さては演奏前のお祈りでも?…いろいろ想像したが、ある日謎が解けた。松本が、歯ブラシを持って、トイレに入るところを目撃したのだ。
彼は歯を磨いていたんだ!…セックスの前、おまじないのように歯を磨く奴がいることは知っていたが、ハーモニカを吹く前に歯を磨くってのは、初めて知った。何事にせよ、真剣に取り組んでいる人間は、ちょっとした行動に、普通の人との違いがでるものだ。さぞかしプロのハーモニカ吹きに、虫歯は少ないだろうな…..
それにしてもハーモニカって、なんとも無垢な懐かしさに、彩られた楽器である。小学生の頃、ランドセルの中で、じっと出番を待っていたのはハーモニカだったし、夏の終わりの赤トンボ達は、ハーモニカで“俺のことを歌い上げて欲しい”とばかりに、夕焼け空を翔んでいた….そんなノスタルジーも、それはそれで、まんざら悪くない。しかし、いつまでも過去の思い出に、浸っているわけにはいかない。人生は短いのだ。
この盤では、その感傷と追憶に包まれた、ハーモニカ・サウンドのイメージの壁を、突き抜けようと努力した。未来を謳い上げる、創造的ロマンティシズムに溢れたサウンドを、表現したかったのだ。それを貴方に、少しでも感じてもらえたらうれしい。

1997年6月1日
ジャズ喫茶イント口店主 茂串邦明

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